小平市の住民投票~本日の天声人語
しっとりとした玉川上水路の、そして、木々の大木がさざめく雑木林の、泰然とした姿が目に浮かびます。
何度も散策したし、幻燈会、プレイバークなどで、お世話になった場所です。
本日の朝日新聞掲載記事 デジタル版よりのコピー
民主主義の実験がまた一つ積み重ねられる。東京都の小平市で26日に住民投票がある。対象は都道の建設計画だが、建設の賛否を問うのではない。市民は「住民参加で計画を見直す」か「見直す必要はない」か、どちらかを選ぶ▼興味深い選択肢だ。建設反対といえば単純だが、計画の見直しというと意味が広い。道を造れという人でも、こんな幅はいらないとか、意見は分かれうる。市民の考えは多様である。それをなるべくすくい取ろうというのが、この設問の狙いだ▼この二択ではわかりにくい、といった懸念もあったようだ。しかし、見直し派が多ければ、どう見直すのか、市民が集まって議論することになる。投票結果が出ておしまいではない。市民が行政の決定過程に入り込んでいく。斬新な設計である▼一自治体での出来事とはいえ、意味合いは大きい。小平在住の哲学者で、今回の投票実現にかかわった國分(こくぶん)功一郎さんは本紙に語っている。「ここに、日本の政治の縮図がある」。有権者は国、地方の議員や首長を選ぶだけで、省庁や役所には何も言えない。そんな仕組みではいけない、と▼市民が関心を寄せても、議会政治や政党政治が取り上げず、選挙でも争われない問題は少なくない。それはおかしいと皆が声を上げる。小平の動きは3・11以後、原発政策をめぐって高まった直接民主主義のうねりと同じ流れの中にある▼代議制を補うべき新しい民主主義の試みはまだ道半ばだ。小平の結果を楽しみに待ちたい。